図面の材質の書き方|材料記号の一覧(SS400・SUS304・A5052・SPCC)と書き忘れの見つけ方
約6分
図面の材質欄に何をどう書くか。SS400・S45C・SPCC・SUS304・A5052 など、よく使う材料記号の一覧と読み方、表題欄への書き方、材質の書き忘れを自動で見つける方法を、実際の検図結果で示します。
材質は、図面の中でいちばん短い記載のひとつです。表題欄の欄に「SS400」と数文字書くだけですが、ここが空いていると、形も寸法も揃った図面でも加工に進めません。材質が無いと何が止まるか、材料記号をどう読みどう書くか、書き忘れをどう見つけるかを順に書きます。
材質が無いと何が止まるか
材質は、図面を受け取った側が最初に決めなければならないことの前提になっています。寸法の抜けは一部の加工だけに効きますが、材質の抜けは部品全体に効きます。
- 材料が手配できない。何の板・何の棒を何キロ買うかが決まらない
- 加工方法と工具が決まらない。鉄・ステンレス・アルミでは切削条件も工具も変わる
- 見積が出ない。材料費も加工費も材質で変わるので、単価を計算する土台が無い
- 推測で進めると危ない。「たぶん SS400」で作った部品が、本当は強度や耐食性の要る部品だったら、作り直しになる
不良品が出るわけではないので、品質の記録には残りにくい不備です。そのぶん同じテンプレートで何度も繰り返されます。一般公差の書き忘れと同じく、表題欄や注記の「定型の一行」が抜けるのが原因で、構造はよく似ています(一般公差については別の記事「一般公差(普通公差)の書き忘れ」で書いています)。
材料記号の読み方とよく使う記号
JIS の材料記号は、材料の種類を表す文字と、強さや成分を表す数字でできています。いくつか読み方を知っておくと、見慣れない記号も見当が付きます。
- SS400 … S は鋼(Steel)、次の S は構造用(Structure)。400 は引張強さの下限(N/mm²)
- S45C … 機械構造用炭素鋼。45 は炭素量がおよそ 0.45% であることを表す
- SPCC … 鋼(S)の板(P)で、冷間圧延(C)の一般用(C)
- SUS304 … SUS はステンレス鋼。304 は鋼種の番号で、数字の並びで系統が分かれる
- A5052 … A はアルミニウム。4 桁の頭の数字が合金の系統で、5000 系はマグネシウムを加えた系統
| 記号 | 材料 | 規格 | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| SS400 | 一般構造用圧延鋼材 | JIS G 3101 | 架台・ブラケット・ベースプレート |
| S45C | 機械構造用炭素鋼 | JIS G 4051 | 軸・ピンなど、熱処理することのある部品 |
| SPCC | 冷間圧延鋼板 | JIS G 3141 | 薄板の板金・カバー |
| SPHC | 熱間圧延軟鋼板 | JIS G 3131 | 板厚のある板金 |
| SECC | 電気亜鉛めっき鋼板 | JIS G 3313 | 筐体・カバー |
| SUS304 | オーステナイト系ステンレス鋼 | JIS G 4303(棒)・G 4304/G 4305(板) | 耐食性の要る部品 |
| A5052 | アルミニウム合金(Al-Mg 系) | JIS H 4000(板) | 板金・プレート・カバー |
| A6063 | アルミニウム合金(Al-Mg-Si 系) | JIS H 4100(押出形材) | アルミフレーム・押出材 |
| C3604 | 快削黄銅 | JIS H 3250(棒) | 小物の切削部品 |
表は代表的な記号の抜粋です。機械的性質や化学成分の値は、それぞれの規格の表を参照してください。同じ材料でも、板・棒・管で規格番号が分かれているものがあります。
材質欄の書き方
書く場所は表題欄の材質欄が基本です。部品表のある組図では、部品ごとの材質を部品表に書きます。書き方で気をつけることは多くありません。
- 1.記号は規格の表記どおりに書く。「鉄」「ステンレス」「アルミ」だけでは、どの鋼種・どの合金か決まらない。SUS304 と SUS430 は同じステンレスでも性質が違う
- 2.板材は板厚を併記する。「SPCC t1.6」のように、材質と板厚を一か所で読めるようにする
- 3.必要なら質別や仕上げまで書く。アルミ板の「A5052P-H34」、ステンレス板の「SUS304-2B」のように、硬さや表面の状態を指定したいときは記号に続けて書く
- 4.熱処理や表面処理は材質欄に詰め込まず、注記に分けて書く。材質欄は「何の材料か」だけにしておくと、読み違いが起きにくい
- 5.指定の無い空欄を残さない。テンプレートの材質欄が空のまま出図されるのが、書き忘れのいちばん多い形
「SS400 相当」「同等品可」と書く運用もあります。その場合も、基準になる記号は必ず書きます。「相当」だけでは、何に相当するのかが分かりません。
書き忘れを自動で見つける
材質の有無は、図面の中の文字を全部読めば機械的に判定できます。ズメケンは DXF(または CAD が出力した PDF)の文字を全文走査し、「材質」「材料」「MATERIAL」といった見出しの語か、SS400・SPCC・SUS304・A5052・S45C などの材料記号の形があるかを見ます。どれも無ければ次の指摘を出します。
重大材質の記載がありません
判定根拠:図面テキスト全文を検索し、該当キーワードが1件も見つかりませんでした
※ 検図で実際に出る文言です。
サンプルのベースプレートは、注記がそろった図面です。一般公差・表面処理・表面粗さ・バリ取りの指示はすべて書かれていて、表題欄には図番・尺度・投影法もあります。ただ、表題欄の材質の欄は見出しの「MAT.」だけで、中身が空です。検図すると、指摘はこの 1 件だけが重大として出ます。
その場で試す
材質欄が空のベースプレート(sample-base-plate.dxf) を検図すると:1 件の指摘。「材質の記載がありません」が重大で出ます。
保存したサンプルを検図ページへドロップしてください。処理はブラウザ内で完結し、図面は外部へ送信されません。
判定は文字の照合なので、同じ図面には同じ結果が返り、根拠(何を探して何件見つかったか)が付きます。処理はブラウザの中で終わり、図面は外へ送られません。
自動判定でできないこと
- 材質の選び方が正しいかは判定しません。強度や耐食性に合っているかは設計の判断で、図面の文字からは決められません
- 記号が規格に実在するか、書き間違いが無いかは見ません。見ているのは「材質を示す語や記号の形があるか」だけです
- 見出しの「材質」「材料」「MATERIAL」があれば、欄の中身が空でも記載ありとみなします。サンプルで指摘が出るのは、見出しが「MAT.」で照合の語に入っていないためです
- 図番や品番が材料記号と同じ形(A や C に数字 4 桁など)だと、材質が無くても記載ありとみなされることがあります
- 部品表の部品ごとに材質が埋まっているかは見ません。図面全体のどこかに材質の記載があれば通ります
- 文字が画像になっている図面(スキャンした PDF、ラスタ化した表題欄)は読めません
自動で見つかるのは「どこにも書いていない」図面です。空欄のまま出図される図面の多くはここで止められますが、欄の中身が正しいかは、人が表題欄を見て確かめてください。
よくある質問
- 材質は「鉄」「アルミ」と書くだけではだめですか
- おすすめしません。鉄にもアルミにも多くの鋼種・合金があり、強さや加工性が違います。SS400、A5052 のように JIS の材料記号で書くと、受け取った側が迷いません。
- 材質は表題欄と注記のどちらに書けばよいですか
- 表題欄の材質欄が基本です。部品表のある組図では部品表に部品ごとに書きます。熱処理や表面処理は注記に分けて書くと読み違いが起きにくくなります。
- 検図ツールは材質の選び方が正しいかも見てくれますか
- 見ません。判定できるのは材質を示す語や記号があるかどうかだけです。用途に合った材料かどうかは、設計者が機能と加工法から決めるものです。
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