一般公差(普通公差)の書き忘れ|JIS B 0405 の読み方と、見積が止まる理由
約7分
図面の注記に「JIS B 0405 中級」が無いと何が起きるか。等級ごとの許容差、書き方の定型文、書き忘れを自動で見つける方法を、実際の検図結果で示します。
図面の寸法には、ひとつずつ公差を書くものと、書かないものがあります。書かない寸法にも許容差は必要で、それをまとめて決めるのが「一般公差(普通公差)」です。注記欄の一行で済むのに、抜けている図面は珍しくありません。抜けると何が起きるか、どう書くか、抜けをどう見つけるかを順に書きます。
一般公差とは何か
JIS B 0405 は「個々に公差の指示がない長さ寸法および角度寸法に対する普通公差」を定めた規格です。図面の注記に「指示なき寸法の普通公差は JIS B 0405 中級による」と書けば、公差の書いていない寸法すべてに中級の許容差が適用されます。加工者は寸法ごとに判断しなくてよく、検査は合否の基準を持てます。
等級は 4 つで、長さの区分ごとに許容差が決まっています。よく使うのは中級(m)で、精級(f)は精密部品、粗級(c)は溶接構造や鋳物に使われます。
| 基準寸法の区分 | 精級 f | 中級 m | 粗級 c | 極粗級 v |
|---|---|---|---|---|
| 0.5 を超え 3 以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.2 | — |
| 3 を超え 6 以下 | ±0.05 | ±0.1 | ±0.3 | ±0.5 |
| 6 を超え 30 以下 | ±0.1 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.0 |
| 30 を超え 120 以下 | ±0.15 | ±0.3 | ±0.8 | ±1.5 |
| 120 を超え 400 以下 | ±0.2 | ±0.5 | ±1.2 | ±2.5 |
| 400 を超え 1000 以下 | ±0.3 | ±0.8 | ±2.0 | ±4.0 |
表は JIS B 0405-1991 表1(長さ寸法の許容差)の抜粋です。面取り部分と角度の許容差は別表にあります。図面に書くときは規格番号と等級を必ず両方書きます。「中級」だけでは、どの規格の中級か決まりません。
書き忘れると何が起きるか
公差の無い寸法は、加工者にとって「どこまで追い込めばいいか分からない寸法」です。安全側に振って精級で加工すれば工数が増え、粗くていいと判断して加工すれば検査で揉めます。どちらに転んでも、費用か納期のどちらかが動きます。
- 見積が止まる。公差が分からないと加工法が決まらず、見積担当が設計に問い合わせる。返事が来るまで見積は出ない
- 単価が上がる。問い合わせが面倒な相手ほど、黙って精級で見積もる。中級で足りる部品に精級の単価が付く
- 検査で揉める。加工者は自分の常識で作り、検査は検査の常識で測る。基準が図面に無いので、どちらも正しい
- 再発する。注記欄の定型文が抜けたテンプレートを使い続けると、その会社の図面は全部抜ける
一般公差を書かなかっただけで、単価が 3 倍になった話は、この一件が全部の寸法に効くから起きます。1 本の寸法の公差なら 1 本ぶんの影響で済みますが、一般公差は図面の全寸法に効きます。
どう書くか(定型文)
注記欄、または表題欄の公差の欄に一行書きます。会社の図面テンプレートに入れておけば、抜けません。
- 1.「指示なき寸法の普通公差は JIS B 0405 中級による。」— 最も一般的
- 2.「普通公差:JIS B 0405-m」— 表題欄の欄が狭いときの略記
- 3.「指示なき寸法の公差は JIS B 0405 中級、指示なき角度は JIS B 0405 中級による。」— 角度も明示するとき
- 4.板金なら「JIS B 0405 粗級」を選ぶこともあります。曲げ加工の実力に合わない等級を書くと、検査で全数不合格になります
海外向けの図面では ISO 2768-m(ISO 2768-1 の中級)を併記します。JIS B 0405 は ISO 2768-1 と同じ表なので、値は変わりません。
書き忘れを自動で見つける
一般公差の有無は、図面の中の文字を全部読めば機械的に判定できます。ズメケンは DXF(または CAD が出力した PDF)の文字を全文走査し、「普通公差」「一般公差」「JIS B 0405」「公差等級」「精級・中級・粗級・極粗級」のいずれかがあるかを見ます。無ければ次の指摘を出します。
要修正一般公差(普通公差)の指示がありません
判定根拠:図面テキスト全文を検索し、該当キーワードが1件も見つかりませんでした
※ 検図で実際に出る文言です。
注記欄が無い図面のサンプルで検図すると、一般公差を含めて 5 件が出ます。材質の未記載は重大、一般公差は要修正、表面処理・表面粗さ・バリ取りは軽微として並びます。重大度は「無いと何が起きるか」の大きさで付けています。
その場で試す
注記欄の無い図面(sample-notes.dxf) を検図すると:5 件の指摘。うち「一般公差(普通公差)の指示がありません」が要修正で出ます。
保存したサンプルを検図ページへドロップしてください。処理はブラウザ内で完結し、図面は外部へ送信されません。
判定は文字の照合なので、注記に書いてあれば必ず通り、無ければ必ず出ます。同じ図面には同じ結果が返り、根拠(何を探して何件見つかったか)が付きます。処理はブラウザの中で終わり、図面は外へ送られません。
自動判定でできないこと
- 等級の妥当性は判定しません。板金に精級と書いてあっても、指摘は出ません。それは設計の判断です
- 文字が画像になっている図面(スキャンした PDF、ラスタ化した注記)は読めません
- 注記の文言が「公差は別紙による」のような場合、キーワードが無ければ指摘が出ます。別紙で管理している会社は、注記に規格名だけ残すと通ります
自動で見つかるのは「書いてあるか、無いか」だけです。それでも、見積が止まる原因の大半は「無い」ことなので、そこを機械に任せると、人は等級が合っているかを見る時間が取れます。
よくある質問
- 一般公差と普通公差は違うものですか
- 同じものです。JIS B 0405 の正式名称は「普通公差」で、現場では「一般公差」と呼ばれることが多いです。図面にはどちらを書いても通じますが、規格番号を併記してください。
- 図面に一般公差を書けば、個別の公差は要りませんか
- 機能上きつい公差が要る寸法には、個別に書きます。一般公差は「書いていない寸法」の受け皿で、はめあい部や位置決め部の代わりにはなりません。
- 検図ツールは一般公差の等級が正しいかも見てくれますか
- 見ません。判定できるのは記載の有無だけです。等級の選択は加工法と機能から設計者が決めるもので、図面の情報だけでは正誤を判断できません。
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